2011年03月04日

ゲゲゲの女房

ゲゲゲの女房

監督:鈴木卓爾「私は猫ストーカー」
撮影:たむらまさき
原作:武良布枝
脚本:大石三知子/鈴木卓爾
出演:吹石一恵/宮藤官九郎


鈴木監督ばんざい!
あの1週間で撮った「私は猫ストーカー』から、
いきなりこんな大作を撮るなんて、
なんと嬉しいことでしょう。

前作のクランクアップの際、真摯に「映画を撮り続けたい」と告げた
その言葉が、こうやって叶って本当によかったと、
このステキに地味な、まっすぐな思いで創られた日本映画を観て感じました。
あ〜、監督が心筋梗塞で倒れなくてよかった・・・
(→意味が分からない方はこの記事の最後らへんをご覧あれ)


特に前半、古き良き日本映画を思わせるいくつかのシーンがあって、
私はファーストシーンの、あの野草が生い茂る曲がりくねった小道だけで
溝口映画を思い出して嬉しくなって、また妻が夫の背中を流しに行く前に
靴下を脱ぐシーンを入れたことで(それもアップで)、
ああやっぱり溝口好きなんだと勝手に納得したりしました。

狭い家屋の撮り方や見せ方にも、堂々と王道を行く潔さがあり、
また妻の実家や夫宅の美術やさりげない照明、色調、ロケーションなどとっても、
あの4:3画面の映画を観ているような佇まいの良さを感じて、
ああこの映画はすごく王道で、日本映画らしい日本映画だと
近年、全くもって感じ得なかった感動ともいえる思いに浸ったのであります。

たむらまさきカメラマンはすばらしい!(実は超大物)
豊かな画を、命ある限り撮り続けてほしいと切に願ってます。
そしてまた「ウンタマギルー」のようなすごい沖縄映画を撮って欲しいな!


宮藤官九郎の演技もメチャクチャ大変すばらしく良かった!
役者としては、比較するのも失礼な話ですが、
最近観ない日はないほど出られてる、香川照之さんよりずっと信頼しています。
宮藤官九郎は「嫌われ松子〜」の時ですら、すっごく良かったので。

だから誰か、吹石一恵さんも良かったけれど、
彼にも主演男優賞を獲らせてあげて〜!!!

片腕でのご飯の食べ方とか、服の脱ぎ方とか、
ハッハッハって豪快な笑い方とか、
メガネをうまく使った多様で細かい表情とか、
「屁です。」の言い方とか(笑)
じわじわとキャラクターがにじみ出る感じで、地味で細やかな演技が 完璧 でした。
もちろんそれは、役者もされている鈴木監督の演出手腕もあってのことですが、
最初細すぎて個人的には違和感があったものの、気づけば役者と役柄が自然になじんで
すっかり宮藤官九郎は武良茂になっていました。

そして鈴木監督についてですが、今回はどこが優れているとかそういうことより、
見終わったあと監督の人間性のようなものが浮かび上がってきた気がしたのが嬉しかった。
これはもちろん、監督が脚本にも携わっているという面から言えることでもあるけれど、
考えて考え抜いて創られたものは、やはりその人の哲学とか人間性とか、とにかく思想が
浮き彫りになってくるもので、それが本物なんだと思う。

鈴木監督は、すごく不器用な生き方をする人だと思う。
そして真面目で、謙虚で、繊細で、とびきりまっすぐな人だ。
この作品を生み出す過程でも、すごく迷いながら進んできた感じがして、
主人公の物語とは別に、監督の生の姿を見たように感じた。

いい監督がいて、ああ日本にいて良かったと思える作品を期待してます。
これからも脇目ふらず、ガンガン映画撮って下さい。


たまーに、こうやって姿を見れるのも嬉しいですが↓



振り向いて倒れるという難しいアクションをごく自然になされてます(笑)



Posted by henry at 23:26│Comments(0)
 
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