2014年01月13日

キャプテン・フィリップス

「キャプテン・フィリップス」

※映画を観た後に読んで下さい。

監督:ポール・グリーングラス
撮影:バリー・アクロイド
出演:トム・ハンクス
脚本:ビリー・レイ

「ボーン・アルティメイタム」の監督が「ハート・ロッカー」のカメラマンで
「ハンガーゲーム」で人気の脚本家の本を撮った。
 …というのが一番この映画を的確に表現しているのかもしれない。
 トム・ハンクスの見事な演技があってこそ、見るべき価値のある映画。

この監督は、緊迫感を演出するには名手だと思います。
観客は船長が船に乗り込んでからラストまで、ずっと緊迫感に襲われ続ける。

ただ私は始まって5分も経たないうちに、
「この人たちは、映画を大画面で観ることを想定して撮らなかったんじゃないか」と思い、
「DVD鑑賞でも良かったか・・・」とちょっと後悔する。

「ハート・ロッカー」のカメラマン(名前を覚えるつもりはないのでこう呼びますが)は、
リアリティ重視の絵の決まらないガタガタ動く近視的な、偽ドキュメンタリスティックなカメラ。
ドキュメンタリーは対象に寄り添うカメラだけれど、これはただ近くで撮ってるだけ!
おかげでエンドロールが揺れる波間に見えたくらい、船酔いしたような気分。
でもアップが多いおかげで、ソマリア人の顔の判別には役立ったけれど。
(誰が誰だか判別つかないうちに、気がついたら4人に減っていた…)

このガタガタ動く、という感想には、カメラだけでなく編集も大きく寄与している。
この映画の編集マンの名前はクリストファー・ラウズ。
この監督とはボーン・シリーズと「ユナイテッド93」などでずっと組んできてますね。
これまで、このブログでも一時期ずっとガタガタ編集すんな!と訴え続けてきましたが、
元凶はコイツです!コイツなんです!(怒)クソ・ラウズ!うるせー編集すんな!
あ、もちろん編集だって、監督の責任も重大ですけどね。

続いてポール・グリーングラス監督、略してPGGと呼ばせていただきますが、
もう、今の時点ではこの人に関して特に語ることはないかもしれない。
冒頭にも書いたように、確かにPGG映画の緊迫感はすばらしい。
カメラが近いので臨場感もある。
でも何か、【映画の決定的な瞬間】を捉えられない人だと思っている。
この映画ならたとえば、「救命艦から脱出できた瞬間」だ。
その瞬間が印象に残っている観客がどれほどいるだろうか?
もちろん感動的な音楽を流すとかベタな演出を望んでいるわけではない。
でもおそらくは血まみれのトム・ハンクスの方がすっかり印象づけられているのではないか?
あまりに偽ドキュメンタリスティック、偽リアリティにこだわりすぎて、
映画が映画であることを忘れている気がする。
もし、救助された瞬間に観客がもっと一息ついて落ち着くことができたら、
その後の衝撃がよりいっそう際立っただろう。
この監督は、観客に呼吸をさせるのが怖いのだ。

そんな監督だから、この映画の「決定的な瞬間」は、ひとえにトム・ハンクスの演技に委ねられている。
それは船長が救助された後の、観る者に衝撃と恐怖を植えつける、あの姿だ。
この瞬間ばかりは、近すぎるカメラも功を奏している。

しかしトム・ハンクスの演技のすばらしさは例えようもなく、類を見ない。
この映画はトム・ハンクスによって観客を納得させ、そして報われた。



Posted by henry at 03:59│Comments(0)
 
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