2014年05月02日

それでも夜は明ける

それでも夜は明ける

監督:スティーヴ・マックイーン
撮影:ショーン・ボビット
脚本:ジョン・リドリー
出演:キウェテル・イジョフォー/マイケル・ファスベンダー/ベネディクト・カンバーバッチ/ポール・ダノ/ルピタ・ニョンゴ/ブラッド・ピットほか

米アカデミー作品賞を受賞した本作。
いや、すごく見応えのある映画でした。
でも、なんかもったいない映画でもありました。

アメリカの奴隷制度という、重大なテーマに向き合った真摯な脚本。
ファスベンダー、カンバーバッチ、製作も務めたブラッド・ピットなどの演技派俳優たち。
しかし肝心の、演出とカメラがイケてない。

この映画を観て、どこか登場人物に感情移入できないと思った人は多いんじゃないんだろうか。

監督とカメラマンは前2作「SHAME」「HUNGER」でも一緒。
その前作でも感じたことだが、このカメラマン、あんまり映画っぽくない。
人物全部アップ、悪くないけど多用しすぎで効果減。
いい画もけっこうあるのに、撮り方が基本正面みたいなワンパターンでいま一つ魅力に欠ける。
動きが少なくて静止画観てる気分になる、写真家に近いカメラマンだ。

監督も、演出力がないわけではない。
しかし誰目線で撮るのかといった選択に於いて、主体性のない捉え方をしているように思う。
だから人の感情も切り貼りされてしまい、感情の流れが観客に伝わらない演出に終始してしまっている。
淡々と撮りたいのはわかる。でも、じゃあいちいち人物をドアップで観てるのはいったい誰なのか。
脱走時の主観ショットのようにそれがシーン毎に明確でないと、観客はどこから、誰目線でこのドラマを目撃しているのか混乱し、結局ただ傍観してしまう結果になる。
またいらないシーンも削らないのも、主体性のなさを感じる。
隣に寝てる女とのシーンを、冒頭に持ってくる意図が分からない。

編集にももの申したい。今回の編集マン、ジョー・ウォーカーも前2作一緒だけれど、なんかリズムが悪いというか、前後の繋がりが不味いとか、長いとこは長過ぎるように感じ、全体の流れの悪さを助長しているように思う。

しかし作品全体で言えば、当時の黒人側、白人側それぞれの生々しさが如実に描かれていて、とても興味深かった。
どんな立派な人物でも黒人ひとり救わない。主人公ですら、仲間の奴隷を助けない。
少なくとも「ホテル・ルアンダ」のような偽善で終わらないのも好感が持てる。
個人的には「殺してくれ」と無言で訴えてくる、ルピタ・ニョンゴの眼が印象深い。
もっと良くなる映画だけれど、十分見応えのある映画です。



Posted by henry at 03:49│Comments(0)
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。