2014年05月22日

8月の家族たち

8月の家族たち
監督:ジョン・ウェルズ
原作戯曲: トレイシー・レッツ
脚本:トレイシー・レッツ
撮影:アドリアーノ・ゴールドマン
出演:メリル・ストリープ
ジュリア・ロバーツ
ユアン・マクレガー
クリス・クーパー
アビゲイル・ブレスリン
ベネディクト・カンバーバッチ
ジュリエット・ルイス
マーゴ・マーティンデイル
ダーモット・マローニー
ジュリアンヌ・ニコルソン
サム・シェパード
ミスティ・アッパム

【ネタバレあり】

原作はもともと戯曲であり、つまり舞台劇/群像劇であるので、
映画にした時、俳優の運動に工夫をしないと、みな棒立ちで演技しているような画になる。
そこにきて、なぜかずっと製作(プロデューサー)をやっていた男が監督をするというイタい采配。
しかも、原作者が脚本を手掛けるというのも、往々にして失敗することあり。
この時点で不安が過るわけだが、見終わった後、その不安は的中してしまう。

この映画のすばらしさは俳優の演技に尽きる。
でも主役以外の、と付け加えないといけないのが残念だ。

私は正直、主役のメリル・ストリープの舞台っぽい演技に辟易してしまった。
頭髪を抜くのは勇気ある行為だと思うけど、そういう表面上の役作りだけで、
中身の演技については近頃一辺倒に見えてくる。
あの上目遣いの、少女のような笑みを浮かべるのはもうよしたらいかがだろうか。

それ以外の俳優はとてもすばらしかった!スプレンディッド!
久々にマーゴを見られたのも嬉しい。(彼女を知らない方は「パリ・ジュテーム」をどうぞ。)
クリス・クーパーとカンバーバッチ親子も完璧。かわいいリトル・カンバーバッチ。

シーンとして一番の見所は、役者全員があつまる食卓のシーンだ。
ここばかりはカメラも気にせず、グッと俳優の演技にのめり込んでしまった。
それぞれの演技の凄みに息を呑みます。
ここだけでも是非観て欲しい。

そして三姉妹もすばらしい。特にジュリア・ロバーツは、もっともっともっと映画に出て欲しい。
とっくに「プリティ・ウーマン」の殻をつき破って、貫禄ある姿を見せつけています。
でもせっかくのサム・シェパード、あんなちょっとでは寂しすぎる!
しかも彼のラスト、とってもいい顔をしているのに、
人が死ぬシーン(それもサム・シェパードの!)をあんな程度しか撮れない監督は、まったくもって信用できない!!
というか、はっきり言ってこの人を映画監督と言っていいのか?というレベル。

ファーストカットは決して悪くない。
しかし何より肝心なラストカットで、自らをイマジネーションのない監督だと証明してしまっている。

映画全体の、ひどく創作力の欠如した、恐ろしくつまらない映画の撮り方。
母娘が薬を取り合いもみ合いになるシーンの、アクションの下手クソさ。
何もないオクラホマ州の広大な景色以外、全く画力がない。
クソ熱いはずのオクラホマ、何℃という数字以外に熱さも渇きも伝わってこない!
逆に監督の演出力のなさを差し引いてもなおこれほどすばらしい演技を見せつけた俳優陣に拍手が止まらない。

また女ニ世代の映画なので、特に女性には響いてくる物語だと思う。
脚本については、例えば、葬式からどれくらい経っているのかといった時系列や、今この家に誰が泊まってるのかさっぱり分からないといったようなけっこう重大な問題があったりするものの、
登場人物の説明とそのキャラクターはほぼその登場シーンで明確に描かれるため、群像劇としてはとても観やすかったし、原作はもっと味わい深いものだろうという予感すらありました。
(原作の戯曲「August: Osage County」はピューリッツァー賞&トニー賞を受賞)

この映画には、クルーニー兄貴のメンツを讃えて、キャスティング賞を贈りたい。
こんなすばらしい俳優が揃った映画はそうそうない。
それだけでも見る価値は十分、十二分にある映画です。
そしてぜひ、彼らが出ている他の映画をチェックしてほしい(笑)

でも個人的には、カンバーバッチのやさしい歌声だけで十分満足でした。



Posted by henry at 21:40│Comments(0)
 
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