2011年08月24日
THE TREE OF LIFE(ツリーオブライフ)

監督・脚本:テレンス・マリック
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:ブラッド・ピット/ショーン・ペン/ジェシカ・チャステイン
言わずと知れた現代の巨匠、テレンス・マリック。
過去作品に「天国の日々」「シン・レッド・ライン」などなど。
「天国の日々」は(前にも書いたような気もしますが、)
マジック・アワーという映画用語を創り出したと言われる不朽の超名作。
「シン・レッド・ライン」も色んな意味で恐ろしい映画です。
未見の方は死ぬまでにぜったいにご鑑賞あれ。
さて、本作すでに2回観ました。
正直1回目は後半まったりしすぎと思いました。
でも2回目はあっという間に終わっていました。
とにかく、こんなに五感を興奮させてくれる映画は久しぶり。本当に久しぶり。
さらには始まって5分で(滝のシーンでした)えも知れない情動が沸き起こって
くしゃみが出たのは、「UP(邦題カールじいさんの空飛ぶ家)」以来。
(二回目は)耳も目も脳も最初から最後まで痺れながらの138分。
しかし心にはゆったりと、壮大な映画が流れていました。
モルダウの、または悠久の時の流れのように。
この映画は、おそらく賛否両論あるでしょうね。
物語で映画を語る人にはあるいは退屈かもしれません。
最初に観た時、これは自分自身と対峙する映画だと思いました。
というのも、監督は元哲学の先生だけあって、特に本作は観念的だからです。
それを、説教臭いといったような評論を書く人もいます。
けれど、私はこの映像美に説教もクソもないと思います。
ただ美しく、観念的であって何が悪い!
映画を文化と思わない人の、なんと多いことか。
どうか、この映画は絵画のように観て下さい。
しかしそんなことをいいつつも、
2回目に観に行った時、事前には途中で出る気でいました。
前半の優雅で壮大な物語を、美しい映像だけを楽しめればいいと。
そうして外に出て、ひとりで思考に耽ろうと思っていました。
本編の後半は家族不和の話になり、舞台が動かなくなって
画がつまらないと思っていたのです。
ところが2回目、私は盲目だったことに気づきます。
陽光の曝け出された、家族の不満や怒りや悲しみや空しさ。
長男の鬱屈した表情と行い、次男の素直で純粋なまなざし。
人は迷い、空を仰ぎ、何度も道を行きつ戻りつしては、振り返る。
家族の思い出を、自分の行いを。
次男の温かな微笑みと、肩にふれた手のぬくもりが、静かに深部を溶かして。
そして辿り着いた、海へとつづく道。
↑ああ、言葉にすればチープだけれど(私の文才の問題か)
見終わって足元を観たら、素足の指の間に白い砂がさらさらと流れていました。
ひたすら美しく、観念的で、
けれども映画としての表現そのものでした。
あの傷ついた恐竜とか、幼いことよく観た家の中を泳ぐシーンとか、
きっとこれからもふと思い出すんだろうな。
最後に、テレンス・マリック監督の新たな奇跡を心から願うとともに、
敬愛なるエマニュエル・ルベツキのカメラに永遠の賛辞を贈ります。
Posted by henry at 00:31│Comments(1)
この記事へのコメント
「群像」でかの評論家が本作を酷評しているとのこと。
さもありなんとは思えども、このすばらしき実験映画に
寛容ならずして、映画を愛していると言えるでしょうか。
さもありなんとは思えども、このすばらしき実験映画に
寛容ならずして、映画を愛していると言えるでしょうか。
Posted by henry
at 2011年09月11日 14:10

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