2011年10月30日
ふたりのヌーヴェルヴァーグ

監督:エマニュエル・ローラン
製作:エマニュエル・ローラン
脚本:アントワーヌ・ドゥ・ベック
出演:イジルド・ル・ベスコ
ゴダールとトリュフォーを映画館で観れるなら、内容は悪くても構わない。
そういう方は是非ご覧あれ。
実際わたしもそのイキゴミで観に行って、単純にファンとして
記録映像だけを楽しみました。
でも、それだけ。
監督の想いとか思想とか全然感じられない。
出来の悪い学生のレポートを見させられた感じ。
まだンHKとかのアーカイブ映像番組とかの方が、金かかってるだけ出来がいいはず。
要は、内容の薄っぺらい、記録映像の羅列だったということ。
ファンならほぼ知っている事実をただ追っただけの内容の上に、
折々資料を調べている男女の説明カットとかもマジいらんし、
映画館の座席を転々とするシーンとか、死ぬほどいらねー。
「きっと監督は、これを"映画”として作ったんではないんだ」と
勝手に合点することにする。
じゃないと納得が行かない!
まさかこの二人を取り上げておいて、
まさかこんなクソな映画を撮るなんて、
きっと何かの間違いにキチガイナイ。
2011年08月24日
THE TREE OF LIFE(ツリーオブライフ)

監督・脚本:テレンス・マリック
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:ブラッド・ピット/ショーン・ペン/ジェシカ・チャステイン
言わずと知れた現代の巨匠、テレンス・マリック。
過去作品に「天国の日々」「シン・レッド・ライン」などなど。
「天国の日々」は(前にも書いたような気もしますが、)
マジック・アワーという映画用語を創り出したと言われる不朽の超名作。
「シン・レッド・ライン」も色んな意味で恐ろしい映画です。
未見の方は死ぬまでにぜったいにご鑑賞あれ。
さて、本作すでに2回観ました。
正直1回目は後半まったりしすぎと思いました。
でも2回目はあっという間に終わっていました。
とにかく、こんなに五感を興奮させてくれる映画は久しぶり。本当に久しぶり。
さらには始まって5分で(滝のシーンでした)えも知れない情動が沸き起こって
くしゃみが出たのは、「UP(邦題カールじいさんの空飛ぶ家)」以来。
(二回目は)耳も目も脳も最初から最後まで痺れながらの138分。
しかし心にはゆったりと、壮大な映画が流れていました。
モルダウの、または悠久の時の流れのように。
この映画は、おそらく賛否両論あるでしょうね。
物語で映画を語る人にはあるいは退屈かもしれません。
最初に観た時、これは自分自身と対峙する映画だと思いました。
というのも、監督は元哲学の先生だけあって、特に本作は観念的だからです。
それを、説教臭いといったような評論を書く人もいます。
けれど、私はこの映像美に説教もクソもないと思います。
ただ美しく、観念的であって何が悪い!
映画を文化と思わない人の、なんと多いことか。
どうか、この映画は絵画のように観て下さい。
しかしそんなことをいいつつも、
2回目に観に行った時、事前には途中で出る気でいました。
前半の優雅で壮大な物語を、美しい映像だけを楽しめればいいと。
そうして外に出て、ひとりで思考に耽ろうと思っていました。
本編の後半は家族不和の話になり、舞台が動かなくなって
画がつまらないと思っていたのです。
ところが2回目、私は盲目だったことに気づきます。
陽光の曝け出された、家族の不満や怒りや悲しみや空しさ。
長男の鬱屈した表情と行い、次男の素直で純粋なまなざし。
人は迷い、空を仰ぎ、何度も道を行きつ戻りつしては、振り返る。
家族の思い出を、自分の行いを。
次男の温かな微笑みと、肩にふれた手のぬくもりが、静かに深部を溶かして。
そして辿り着いた、海へとつづく道。
↑ああ、言葉にすればチープだけれど(私の文才の問題か)
見終わって足元を観たら、素足の指の間に白い砂がさらさらと流れていました。
ひたすら美しく、観念的で、
けれども映画としての表現そのものでした。
あの傷ついた恐竜とか、幼いことよく観た家の中を泳ぐシーンとか、
きっとこれからもふと思い出すんだろうな。
最後に、テレンス・マリック監督の新たな奇跡を心から願うとともに、
敬愛なるエマニュエル・ルベツキのカメラに永遠の賛辞を贈ります。
2011年03月04日
ゲゲゲの女房

監督:鈴木卓爾「私は猫ストーカー」
撮影:たむらまさき
原作:武良布枝
脚本:大石三知子/鈴木卓爾
出演:吹石一恵/宮藤官九郎
鈴木監督ばんざい!
あの1週間で撮った「私は猫ストーカー』から、
いきなりこんな大作を撮るなんて、
なんと嬉しいことでしょう。
前作のクランクアップの際、真摯に「映画を撮り続けたい」と告げた
その言葉が、こうやって叶って本当によかったと、
このステキに地味な、まっすぐな思いで創られた日本映画を観て感じました。
あ〜、監督が心筋梗塞で倒れなくてよかった・・・
(→意味が分からない方はこの記事の最後らへんをご覧あれ)
特に前半、古き良き日本映画を思わせるいくつかのシーンがあって、
私はファーストシーンの、あの野草が生い茂る曲がりくねった小道だけで
溝口映画を思い出して嬉しくなって、また妻が夫の背中を流しに行く前に
靴下を脱ぐシーンを入れたことで(それもアップで)、
ああやっぱり溝口好きなんだと勝手に納得したりしました。
狭い家屋の撮り方や見せ方にも、堂々と王道を行く潔さがあり、
また妻の実家や夫宅の美術やさりげない照明、色調、ロケーションなどとっても、
あの4:3画面の映画を観ているような佇まいの良さを感じて、
ああこの映画はすごく王道で、日本映画らしい日本映画だと
近年、全くもって感じ得なかった感動ともいえる思いに浸ったのであります。
たむらまさきカメラマンはすばらしい!(実は超大物)
豊かな画を、命ある限り撮り続けてほしいと切に願ってます。
そしてまた「ウンタマギルー」のようなすごい沖縄映画を撮って欲しいな!
宮藤官九郎の演技もメチャクチャ大変すばらしく良かった!
役者としては、比較するのも失礼な話ですが、
最近観ない日はないほど出られてる、香川照之さんよりずっと信頼しています。
宮藤官九郎は「嫌われ松子〜」の時ですら、すっごく良かったので。
だから誰か、吹石一恵さんも良かったけれど、
彼にも主演男優賞を獲らせてあげて〜!!!
片腕でのご飯の食べ方とか、服の脱ぎ方とか、
ハッハッハって豪快な笑い方とか、
メガネをうまく使った多様で細かい表情とか、
「屁です。」の言い方とか(笑)
じわじわとキャラクターがにじみ出る感じで、地味で細やかな演技が 完璧 でした。
もちろんそれは、役者もされている鈴木監督の演出手腕もあってのことですが、
最初細すぎて個人的には違和感があったものの、気づけば役者と役柄が自然になじんで
すっかり宮藤官九郎は武良茂になっていました。
そして鈴木監督についてですが、今回はどこが優れているとかそういうことより、
見終わったあと監督の人間性のようなものが浮かび上がってきた気がしたのが嬉しかった。
これはもちろん、監督が脚本にも携わっているという面から言えることでもあるけれど、
考えて考え抜いて創られたものは、やはりその人の哲学とか人間性とか、とにかく思想が
浮き彫りになってくるもので、それが本物なんだと思う。
鈴木監督は、すごく不器用な生き方をする人だと思う。
そして真面目で、謙虚で、繊細で、とびきりまっすぐな人だ。
この作品を生み出す過程でも、すごく迷いながら進んできた感じがして、
主人公の物語とは別に、監督の生の姿を見たように感じた。
いい監督がいて、ああ日本にいて良かったと思える作品を期待してます。
これからも脇目ふらず、ガンガン映画撮って下さい。
たまーに、こうやって姿を見れるのも嬉しいですが↓
振り向いて倒れるという難しいアクションをごく自然になされてます(笑)
2010年11月08日
扉をたたく人

脚本・監督:トム・マッカーシー
撮影:オリヴァー・ボーケルバーグ
編集:トム・マカードル
出演:リチャード・ジェンキンス/ヒアム・アッバス/ハーズ・スレイマン/ダナイ・グリラほか
アメリカの移民問題を背景に、
妻を亡くした孤独な男が移民の人々との交流により
変化していく物語。
監督は俳優のトム・マッカーシーで監督二作目とのこと。
(一作目は日本未公開の「The Station Agent」(2003)、
んでなぜか「カールじいさんの空飛ぶ家」の原案者でもある)
とにかく丁寧に日常の物語を描く姿勢に、
監督の真摯な想いをしっかと感じました。
ファーストシーンでは、妻が残したピアノを弾くために
ピアノの先生を4人も解雇する場面。
この時の主人公のメガネの奥の瞳の鋭さなんか完璧。
主演リチャード・ジェンキンスは40年のキャリアで初主演!
この人の演技にはもう〜言葉がありません。自然すぎる!
最初の曇った頑な表情から、徐々に目が光を帯びて来るのがわかります。
また、若い二人の演技もよかった。
あんな神経質な黒人女性を映画で観たことがなかったし、
また快活なシリアの青年も後半アップばっかりだったけれどよかった。
単にジャンベで元気になるおじちゃんの話だと思っていたら大間違いで、
意外にもアメリカの移民問題だったり、疑似家族的な展開だったりして
さまざまな暗い影を映しながら控えめな演出で物語は淡々と進んで行くんだけど、
その中でもちゃんと人が笑ったり、怒ったりという情動が描けており
ヒューマンドラマ(って言葉は嫌いだけど)としても今年観た中でも最も良質な作品だった。
また拘置所に入るシーンやジャンベを習うシーンでは
HOW TOモノ的なおもしろさもあり、
物語で映画を見る人にも高評価を得られそう。
実際、アメリカの移民問題は大きな難題であり
その問題提起として、深く心に留まる作品になりました。
好きなのはNYの別宅に来て奥の部屋に明かりが着いていて
ゆっくりとそのドアに近づいていくちょいスリリングなシーンと
階段途中でタレクとゼイナブがこそこそ話をするシーン。
この監督、カメラの前を前後させたり(奥行きの演出)、
階段の高低差を利用するあたり信用できます。
というか、こんなすばらしい作品を二作目で撮るなんて
間違いなく才人です!
カメラも引き気味で好かんたらしい。
色もすごくよかったし、映画全体を通してショットの調和もとれていて、
見ていて久々に心地よかった。
ああ、映画館で観たかった・・・。
あと、やるせない悲運のあと、暗黒の海に浮かぶNYの夜景がよかった。
昼間、三人で船上で見たときとはまるで違う場所のよう。
あ、でもこのあたりの編集はちょっと短すぎたな。
なぜか急ぐような感じがあった。
尺は104分でちょうどいいのだけれど。
ラストシーンでは、ジャンベが怒りの音楽になったのが悲しかった。
楽しみだったものが、怒りを表現する道具になってしまう切なさ。
そしてその怒りの音さえも、地下鉄の騒音にかき消されるアメリカ。
「自由」も「正義」も、独善的すぎる。
2010年11月07日
2010年10月25日
悪人

監督:李相日
原作:吉田修一
脚本:吉田修一・李相日
撮影:笠松則通
編集:今井剛
出演:妻夫木聡/深津絵里/満島ひかり/岡田将生/光石研/樹木希林/柄本明ほか
李監督は「フラガール」以来2作目です。
前作はあまりの感動を強要するような作風と松雪泰子の演技の下手ぶりに絶句でしたが
今度はシリアスな犯罪ものだし、モントリオール映画祭受賞の話題もあって
懲りずに鑑賞。
ファーストシーンは好ましいものでした。
ガソリンを入れるところから始まり、車の疾走感、
山道を走った先に広がる都市の夜景。
ロードムービー的な始まりは、
良作の予感すらありました。
そして妻夫木君はもちろん、満島ひかりさんと岡田将生の好演もあり、
前半ぐいぐいと引き込まれていました。
ホントにいそうな軽薄な友情で結ばれた女達の会話、
軽々しい男と女とその絡みと結末、(あれ、ホントに蹴られて頭ぶつけてたよな?)
そして妻夫木君のキレた瞬間。
樹木希林さんも最初の台所のシーンと妻夫木君との食事のシーンはよかったし、
柄本明さん、光石研さんの抑えた演技もすばらしかった。
特に柄本明さんの、娘の死体を確認する場面には思わず胸が詰まりました。
しかし、深津絵里さんが出てきたころから、
少しずつ「?」な場面が出てきた。
まず、二人の関係が深まるまでがあまり描けていないこと。
最初のホテル直行のデートの後に、謝りに来て、
もうそこから離れられない二人みたいになっちゃう。
また、妻夫木君が深津絵里に殺人を告白する大事な場面で、
まだ料理も運ばれてないのに、そのタイミングでの告白に違和感。
二人が初めて食事をすることってとても大事だと思うのに、食べてないし。
この辺で、二人の関係性を描く大事なポイントをスルーしてしまってる。
さらには、イカのドアップからズーミング、そしてイカの目から回想シーンに入る所。
イカって・・・???
ここ、笑わせるところ?
あと、二回目のセックスシーンは、一回目が挿入だけだったんだから、
もっとそれ以外を撮らなきゃいけなかったと思う。挿入シーン3パターンは貧相。
もちろん役者の制限はあったにしてもだ。
そしてさらに後半、前作の片鱗が見え始める。
最初は効果的に見えた沈黙の演出も、多用しすぎて効果が薄まり、
だっさいスローモーションに完全にしらける。
果てには樹木希林すらヘタクソに見えてきた。
(近年の彼女は役柄も一辺倒だし、演技も決まってきてしまっている)
祐一の母とか出てこなくてもよかったしさー、
後半はいらないシーンが多いと感じた。
松尾スズキの出てくる場面とか、バスの運転手の場面とかいらないから、
その分前半でもっと妻夫木君のキャラクターを掘り下げて欲しかった。
おそらくは樹木希林と柄本明の役柄にも注視したかったのだろうが、
樹木希林のキャラクターについてはもはや説明はいらないと思うし、
柄本明の家庭のシーンは宮崎美子が台無しにしてしまっている。
事件現場に行って娘の幻影を見る場面も、もう少し映画的にならなかったか。
岡田君に襲いかかるシーンも、2回に分ける必要があったか。
うまく行ってないから、余計にいらないと感じた場面もあった。
カメラは、後半特にアップが多かった。
カメラマンは坂本順治監督と近年よく組んでいる方だけれど、
編集の悪さもあって、あまり気持ちがいいカメラとは思えなかった。
ただ、ロケーションと美術はすごくよかったと思う。
祐一の海辺の鄙びた家と、灯台あたりの断崖。
本作のHPを見ると、美術監督は「スワロウテイル」を手がけた
種田陽平さんだそうだ。
やっぱり好きですね、この人は。
さてまた好き放題書いてしまったけれど、
この監督は難しいですね。
正直言って好きじゃない。
きっと、ハリウッドとか行っちゃって、
メジャーなクソ恋愛映画とか撮りたいんじゃないかな。
分かりやすさをそんなに追い求めなくてもいいのに、って思う。
しかししかし、出演陣は前述の二人のぞいてみな好演だし、
原作はおもしろそうなので読んでみたいと思う。
今後に期待です。
2010年08月15日
ブログタイトルを変えました。
「告白」の前は半年もアップ出来ていませんでしたね。
自分でもびっくり。
昨今、映画評とは言えない記事ばかりでしたし、
正直そんなに映画を語れるほどの力量ねえし、
もっと肩肘張らずに気楽に映画の感想を書きたいと思い、
タイトルを
「ヘンリーの映画評」から、
「ヘンリーの映画日記」に変えることにしました。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
自分でもびっくり。
昨今、映画評とは言えない記事ばかりでしたし、
正直そんなに映画を語れるほどの力量ねえし、
もっと肩肘張らずに気楽に映画の感想を書きたいと思い、
タイトルを
「ヘンリーの映画評」から、
「ヘンリーの映画日記」に変えることにしました。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
2010年07月03日
これは映画ではありません。再現ドラマです。「告白」

脚本・監督:中島哲也
原作:湊かなえ『告白』(双葉社刊)
撮影:阿藤正一・尾澤篤史
出演:松たか子・木村佳乃・岡田将生・西井幸人・藤原薫・橋本愛 ほか
思わずタイトルにしてしまいましたが、
これ、「CMディレクターがつくった、テイのいい再現V」ですよね。
役者の演技もビックリするぐらい舞台役者みたいなオーバーな演技で・・・。
(序盤抑えて演技をさせ、それから感情が爆発する場面があるのですが
それがまるでマンガなんですよね・・・)
映画館で見るより、携帯の画面か、テレビ画面のサイズで見るように
つくられた映像なんじゃないかと思います。
そのサイズがふさわしいです。
これが今日本で一番ヒットしてる映画なんだと思うと、
やぱりお話の衝撃度とか、中島哲也というブランドとか、
そういったことで映画を観ている、もしくは評価する人が
多数を占めているのではないかという憶測が浮かんできます。
もっとも、このようなCMとか、PVみたいな映像、
好きな人多いですものね。
もちろん、それらとして観るならキレイですから、私も好きです。
しかし、ほぼ全編ナレーションのような長セリフで語られる、
映像はその説明(付属)でしかないような代物を、
私は映画と呼ぶことはできません。
中島哲也監督は、もう信用出来できなくなってしまいました。
2010年02月06日
「ラブリー・ボーン」

監督:ピーター・ジャクソン
脚本:フラン・ウォルシュ/フィリッパ・ボウエン/ピーター・ジャクソン
撮影:アンドリュー・レスニー
編集:ジャベツ・オルセン(新人)
出演:シアーシャ・ローナン/マーク・ウォールバーグ/レイチェル・ワイズ/
スタンリー・トゥッチ/スーザン・サランドン
「乙女の祈り」「ロード・オブ・ザ・リング」「キング・コング(2005)」のピーター・ジャクソン監督最新作。
過去作品から、想像力豊かで、ダイナミックかつ迫力満点のエンターテイメント監督、というイメージがあったので、とくに本作品はどんなファンタスティックな「あの世」を描いてくれるかを楽しみに観に行ったのですが、その辺はちょっともの足りなかった。
一番好きだったのは、巨大化したガラス瓶の中の船が波間でガンガン壊れていくシーン。
壊している父親の感情も伝わってきて、いい場面でした。
また、枯れ草の草原が海に変わるシーンもなんか好き。
もっとそういう空想世界を観たかった!!!!!
期待した、天国と現世の狭間の世界で主人公の女の子が遊ぶシーンは、
個人的にはサラッと流されたな〜、くらいのボリュームでした。
それなりに、だけどイマイチ!
いつものイマジネーションの豊かさよりはだいぶ欠ける気がしました。
(たとえば〜観た人ならわかるはず〜いつもならあの雪山を滑るシーンで、
もっと迫力ある(主観ショットとかね)撮り方してたのにな・・・とか。)
ピーター・ジャクソンなりの「あの世」の世界をもっとみたかった。次回に期待。

←ウユニ塩原。
行ってみたいけど
CGなら、いとも
簡単に作れるん
だろうね。
30キロものぜい肉をそぎ落として、ついでに
イマジネーションまでそぎ落としたのでは?
というか、このひどいヤツれよう、病気じゃないだろうか?


(左)ダイエット前の
ピーター・ジャクソン
(右)ダイエット後の
ピーター・ジャクソン(右)(左は製作総指揮のスピルバーグ)
さて、全体的にはどうだったかというと、残念ながら完成度低し、といったところ。
私には肝(キモ)が見えない映画でした。
さりとて映画館で観て損する映画ではないんですけれど。
(映画館で観てソンをするような映画はこのブログには載せません。)
もともと物語というよりかは映像先行の監督だと思いますが(思ってきましたが)
前述の通り、今回はそっちにさほど力が入ってない気がしました。
撮り方も、カメラはいつも通りほとんど動いているのですが(フィックス嫌いなだけかも)
今回は常に躍動感が必要な映画でもないですし、
ミステリーの要素・・・犯人探しの緊張する場面でも、ヒッチコックの踏襲…と感じたし、
逆にどこを観て欲しかったのだろう?と考えてしまうのです。
ついでに言うなら、編集もあんまりよくなかった。
また物語の部分、つまり脚本についても同じことが言えるのですが、
ありきたりな話だと思うんですね。仏教でいう因果応報?みたいな。
・・・腑に落ちないんですよね、何が言いたかったのか。
この話は原作があって、原作者とは別に、監督含め三人で脚本を手がけています。
だからというわけではないけれど、何かまとまりのない印象です。
色々な要素をゴタゴタと取って付けて、無理矢理まとめたような話。
キモがないのは、背骨のない脚本のせいもあると思います。
ここからネタばれあり。
たとえばあの夫婦愛の描き方しかり、
実は犯人は連続殺人犯だった!的なオチ?しかり、
そしてあのラスト(犯人と、少女と、残された家族の顛末)しかり。
なんだ、よく見る感動系に仕上げたかったのか、と。
ラストショットも印象なく憶えていないくらい(笑)
ネタばれ終わり
映像的アイテムを使うアイデアは監督のものだったでしょうね、
あの天国との境目であるらしき木とか、(何かしら意味があると思いますが)
金庫、穴、薔薇、氷柱(ツララ)などなど・・・
見た目はおもしろくなる。しかし期待するほどの効果・あるいは使われ方ではなかった。
(もともと、映像記号を使うような監督ではないですが。)
ホント、痩せてから何かが損なわれた感のあるピーター・ジャクソン監督。
心配しつつも、次回にまた期待。
かといって、重ねて言いますが、映画館で観てソンするような映画ではないです。
特に主役のシアーシャ・ローナン、かなりカワイイです。
彼女の笑顔がこの映画を支えているといっても過言ではないくらい。
ぜひ映画館で鑑賞を。
ただしスーザン・サランドンだけは目をそむけても結構。
(彼女のこの映画での使われ方は悲惨きわまりないです。)
2010年02月02日
「パブリック・エネミーズ」

監督:マイケル・マン
脚本:ロナン・ベネット/アン・ビダーマン/マイケル・マン
撮影:ダンテ・スピノッティ
出演:ジョニー・デップ/クリスチャン・ベイル/マリオン・コティヤール ほか
今年からは、フィルム鑑賞したものはなるべく全作
感想だけでもこのブログに残そうと思います。
実在したアメリカの伝説的ギャング、ジョン・デリンジャーの人生の物語。
大恐慌時代に大胆な手口で銀行を襲う強盗として人気者だったジョン・サリンジャー。
しかしジョニー・デップ演じるこの強盗のソコがそもそもあんまり描けてない。
140分ありながら、ドラマでありながら、
キャラクターが作れていない、人間を描けていない。という印象を持った。
特に、ジョン・デリンジャーを追う捜査官役のクリスチャン・ベイルに関しても、
映画が終わってから彼はその後自殺したというテロップが出るのだが、
そこまで(人間性を)描けていないので、
それを観客に知らせること自体が中途半端に思ったくらいだ。
ギャング映画として、男の子映画としては充分楽しめた。
銀行強盗をするシーンや、脱獄する時のワクワク感がいい。
これぞメジャー映画を観てるぞっていう実感があって。
アクションシーンとしては終盤の、
森のモーテルでの銃撃シーンが好きだ。
夜の森の照明の色や使い方も好きだし、
(この時のクリスチャン・ベイルが一番かっこいい!)
また静かな夜の森にひびく音がとても大きくて、
銃の閃光も派手で面白かった。
音と言えば、ふいに無音になったり、
環境音だけになったりするのが気になった。
特にその銃撃シーンのあと、森の中を逃げるシーンなどで
息づかいだけ聞こえる場面の緊張感はよかったと思う。
(無音で背後に見える追っ手が起き上がるシーンも)
ただ全てがうまく行っているとは思えなかったけど。
音楽はビリー・ホリデイの曲が使われていたのが個人的に好きだった。
またマドンナ役のマリオン・コティヤールの演技は序盤の媚びた女の演技の演技から、
夢が消えさり、現実に引き戻されるまでが目の輝きひとつで感じられた。
やはりフランス女性には憂いが似合う。なんつて。
そして、この映画でもっとも残っているシーンはラストシーンだ。
彼女の主観ショットで終わるのが印象的だった。
彼女の夢が終わった瞬間。
彼女はまた、ホテルのクロークに戻るのだろう。
2010年01月24日
「ポー川のひかり」


監督:エルマンノ・オルミ
撮影:ファビオ・オルミ(息子)
出演:ラズ・デガン/ルーナ・ベンダンディ ほか
当時76歳のおじいちゃんが作る映画の、なんと美しく、叙情的なことだろう。
なんと、おおらかで豊かなのだろう。
光のそばには、必ず陰影がともなう。
人々の平和にも、幸せにも、必ず影が差す。
この映画もまた光と影の映画であり、人々に、そして世界にあかりを灯すのだ。
<ネタバレあり。>
まずオープニング、図書館職員のパニックぶりからしてコメディである。
話としては序盤の犯人探し、それから犯人である主人公の話になっていくのだけれど、
この事件も、話の筋も、この映画ではあまり重要でないと思う。
とにかく、美しい景色と、そこに住む人々に微笑みながら、楽しんで観てほしい。
川辺の風景はため息がでるほど美しいし、
出てくる人みな、愛すべきキャラクターなのだから。
主役のラズ・デガンはいかにもなキザなダテ男で最初がっかりしたのだが、
彼が川辺に辿り着いた翌朝、寒々しい雨に打たれ、
廃墟で暖をとるシーンでなぜかグッと気持ちが引き寄せられた。
たき火のシーンというのは、観客の体温も変えるらしい。
そして彼は川辺の廃墟に住むことになるのだが、
ここでこの映画でもっとも愛らしい、パン屋の田舎娘が登場する。
写真でもわかるが、おてんばというか、色気も飾り気もまったくない娘で、
太ももをおおっぴらに見せ、ガニ股で自転車をこぐのだ。
彼女がパンを宅配するシーンや、
彼と浜辺で初デートするシーンはおもしろすぎる。
(男が彼女を二度見する場面は爆笑です)
それから川辺に住む人々としだいに交流していくのだけれど、
みんなで家作りを手伝うシーンなんかは観ていて微笑ましい。
そしてみなそれぞれに問題を抱えつつも、自分らしく豊かに生きているのだ。
印象的だったのは、ダンスパーティの途中、川を下りながら、自分たちと同じように
フェリーの甲板で優雅にダンスしている人たちを眺めるシーンなのだが、
序盤に出てくる川の生態系を乱すという大きな鯰の登場に始まり、
おそらく富裕層が乗っているこのフェリーや、
後半の主人公に警察の手が及ぶシーンで現れる黒いタンカーやトラクターは、
人々の幸せを根底から揺るがし、奪う巨大な力の象徴で、
それらに対してどう立ち向かうのか、主人公を介して監督は語っている。
この影なる存在が忍び寄る、あるいは唐突に現れるところが、
ロバート・アルトマンの遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」を想起させた。
そうして、物語も結末を迎えるのだが、このラストシーンがとてもよかった。
少女が女になった瞬間を、影から、また光がさしてくる瞬間を、
静かに描いた名場面である。
エルマンノ・オルミ監督は、長編映画はこれで最後だと宣言している。
もともと寡作な監督ということもあってとても残念だが、
いやしかし、おじいちゃんたちの映画は期待を裏切らない。
どうしてだろうか?
古き、良き時代の最後の語りべだからだろうか?
2010年01月04日
「UP(カールじいさんの空飛ぶ家)」


原案・脚本・監督:
ピート・ドクター
ボブ・ピーターソン
製作総指揮:
ジョン・ラセター
「モンスターズ・インク」の監督と「ファインディング・ニモ」の脚本家がタックを組んだ、
ピクサー長編10作目にして初、人間が主人公の作品という記念碑的作品が、この「UP↑」。
タイトルも実にシンプルでよい!
ストーリーもまたシンプルでありながら、
最後にはじんわり人をチアーアップ↑させてくれる
ほほえましい作品です。
まず絵的にひかれちゃいますよね、
たくさんのカラフルな風船で、"家”自体が飛んじゃうんですから。
子供も大人もビックリする、いいアイデアですね。
思わずトップ画像を2枚にしてしまいました。
さて、さっそく映画の感想に入りますが
公式ホームページで宮崎駿も言ってますけれどね、
冒頭に出てくる妻との結婚生活の追憶シーン、
本当によかったです。
珍しくうるっとなってしまいました。
セリフなしで、サイレントで語られているのですが、
品がいいというか、「理性」がある映像でした。
例えば妻が亡くなったという場面も、
じいさんの途方に暮れた佇まいで判らせてくれます。
こういうの、セリフやわかりやすい画を入れなくても
(子供ですら)ちゃんとわかるのに、
今の映画は本当に説明しすぎです。
この冒頭のシーンだけで、ツカミ(感情移入)は充分すぎるほど。
じいさんの悲しみが心に染み入るようでした。
しかしその悲しみせいか、次のシーンでは
頑固で偏屈なじいさんになってしまってるギャップが面白い。
カールじいさんも、ラッセル君も、
キャラクターがしっかり設定されていて好感が持てます。
ピクサーはシナリオも優秀です。
(脚本の二人は過去アカデミー脚本賞ノミネート歴あり。)
さあそしていよいよ、冒険の旅に出ることになるのですが、
家が地面をはなれ、街中を浮かんでいくシーンは
この映画の中でも屈指のうつくしい情景です。
建物や部屋の壁に映る、にじいろの風船の影が
その浮遊感と相まって、まるで夢のように美しいです。
ここからは、ちょいネタばれあり。
そして物語は冒険へと続いていくのですが、
空の旅が短いのが意外でしたね。
もっと俯瞰の、遠景のシーンがあっても
気持ちよかったな〜と個人的には思いました。
(後半ちょっと広い絵が少ない気がしたので)
また、予想外にあっけなく目的地付近に着いてしまうのもビックリ。
この辺は意識的にカットしてる気がしました。
ラピュタとかぶるからかな?
風景だけだと子供が飽きるからかな?
エンターテイメントに徹した結果でしょうか。
でも私が一番ドキドキしたのは
この序盤の嵐のシーンだった気がします。
足下をさらわれるような不安定感がたまらなかった。
陸地についてからのすったもんだは
もちろん観てのお楽しみとして、
観ていて新鮮だったのは、
子供と大人では笑いどころが結構違うということ。
私なんかがシレっと流すようなコメディでも、
子供たちはケラケラと笑ってたりして。
例えば、太っちょの男の子ラッセルが
カールじいさんの顔をよじ上るところで子供は笑い、
大人はその後長いこと頭上のロープをのぼってたラッセルが
実は頭ひとつ分も登ってなかったとわかるカットで笑うとか。
人それぞれ好みはあれど、場内の反応を観る限りは
子供のツボはしっかり押さえていたんじゃないかと思います。
大人はきっと、じじい二人の接近戦で爆笑だったはず。
そして後半、徐々にふたりに友情が芽生えてきて、
カールじいさんが少しずつ過去ではなく未来に、
思い出よりも、新たな体験に目を向けていく姿に
励まされましたね。
ラスト、お家が違う滝の上に乗っかってたのがよかったですね。
また、新しいスタートへ降り立って、
そして新たな冒険は、永遠つづくのだ。
チャンチャン。
めでたし、めでたしのなんとも幸先の良い、新春映画でございました。
というわけで、今年もよろしくお願いします。
今年はもっと書きたいと思います。
2009年08月20日
肉厚な男の濃厚な人生「レスラー」

監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ミッキー・ローク/マリサ・トメイ
また、いい映画を観てしまった。
まっすぐな男の哀れな人生。
こういう不器用な人生、最近じんわりきちゃう。
ミッキー・ローク、ほんとうにいい表情(かお)してた。
穏やかで、純粋な目。
自分にまっすぐに、その分憂いを味わって生きてきた表情。
彼が扮するのは、補聴器をつけ、体を重たそうにして歩く初老の現役レスラー。
人生の陽がとっぷりと暮れだした彼を、
朽ちていく風景の中に、静かになじませるように描いた作品。
久々に人生をしっかりと観せられた気がした。
しっかりと、ずっしりと。
決して明るい話ではない。
でも、暗いだけの話でもない。
ちゃんと人生の浮き沈みを描いてる。
104分でこれだけ描いている。
長いだけで上っ面の人生しか描けない
「ベンジャミン・バトン」とは大違い。
(↑一言余分ですが。)
彼が日暮れ間近に、地平線の上でもがいて、あがいて、死を生を受け入れていく様。
そして彼が人生の最後に放った光を、最後までカメラが捉えている。
雨に濡れた朽ちた木の匂いがしそうな街で、
私はちゃんとそれを観ていたような気がする。
最後に浮かべた、諦観の、俺は確かにどうしようもない、しょうがない男だった、
でもこれで俺はよかったんだ、まあまあ満足したぜ。
的な表情(かお)が、なんとも言えない。言葉にしがたい。ただすばらしい。
共演の、マリサ・トメイも最近ちょくちょく見かけますが、
今回も美しい肢体をご披露しつつ、
ご指名がかからなくなった中年のポールダンサーを見事に演じてます。
個人的に好きです、この女優さん。
こういう憂いある役が特にハマる気がする。
また、ロケーションや小道具も効いてましたね。
郊外の朽ちた色の街並みや、元遊園地の廃墟、昼間なのに暗いカフェバーとか、
時代遅れのゲームやフィギィアや、80年代のロックや、
ラストはブルース・スプリングスティーンの曲が流れたりして。
徹底してましたね。
ちょっと並べるとうんざりするけど(笑)
個人的には、今やレアとなった公衆電話ボックスのロケーションが好きでした。
後ろの方に朽ちた橋か線路みたいなのが見えてて、しみったれてて。
カメラは手持ちや、後ろからのフォローを多用したりして現実感出してましたね。
特にフォローが多いのは気になりました。
いい効果だとは思うけれど、一度だけカメラを前にふって顔を見たくなった(笑)
でも全体的なカメラのバランスはすごくいいと思います。
個人的にロング(ショット)が好きで、でも今回は少なかったのですが、
あまり気になりませんでした。
でも現実感だけにとらわれず、会話のシーンなんかはしっかり
カット割ってるところが、個人的には何か安心できて。
演出力はもちろんのこと、実力がある監督のような気がします。
他の作品も今後にも期待大です。
まあほんとに、主役がニコラス・ケイジじゃなくてホントよかったと思う。
また一言余分ですが。
2009年07月01日
舌をなめらかにする極上の赤ワイン「それでも恋するバルセロナ」

脚本・監督:ウディ・アレン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
出演:ハビエル・バルデム/ペネロペ・クルス/スカーレット・ヨハンソン/パトリシア・クラークソン
映画って、観たあと人を寡黙にさせるものも、また饒舌にさせるものもある。
ウディ・アレンの映画は、明らかに後者の方だ。
彼自身映画の中では多弁だし、また映画自体もおしゃべりだからだろう。
そんなワケで久しぶりに映画評…いや、感想を書きたくなりました。
ウディ・アレンがヨーロッパに渡ってからは四作目。
ちなみに他の三本は、イギリスで撮った
「マッチ・ポイント」、「タロットカード殺人事件」、「カサンドラ・ドリーム(日本未公開)」。
原題は「VICKY CRISTINA BARCELONA」。
日本ではポップなドタバタ恋愛映画みたいな広告だけど、違います。
本当の大人が出てくる、繊細な人間描写のなされた秀逸な恋愛映画です。
少なくとも、自分の恋がどんなタイプかも知らないガキがターゲットの映画じゃないと思う。
ワインの味がわかるくらいの、大人が見た方が遥かに楽しめる恋愛映画だ。
さて、まずはカメラについて。
撮影のハビエル・アギーレサロベとは初タック。
カメラに関して言えば、特にヨーロッパに渡ってから、撮り方が“ラフ”になっている感がある。
今回も少し“近い”感じで、やや絵心に欠け、また照明も、ハッとするような工夫は見られず。
きっとジャズマンらしく、カメラマンともセッションしているんだろう。
ただ、会話の切り返しの部分でオーバーラップしたのとか、
セックスシーンも…すべてアップで、肌の質感は感じられたのものの、
「マッチポイント」のそれの方が遥かに湿度や熱が感じられて色気がある。
もうちょっと…力入れて撮る部分があってもいいかなと思う。
しかし、カメラはいまいちでも(そんなにすごく悪いわけじゃないけど)、
やっぱり演出が力があるし、役者もいいので
自然にカットを割らずに撮れているのはすばらしい。
当たり前だけど、「やっぱりウディ・アレンは上手い監督だ!」と
再確認させてくれるだけの力はもちろん充分にある。
少し話をそらすと、最近のイーストウッド作品にも同様の印象を持つ。
二人ともジャズマンだし、年取って(ウディもイーストウッドももう七十代だ)
丸くなってきてんだろうな、なんて。
それもまた、広く言えば作家性だろう。
また、彼らの作品はとてもリズムがいい。
小気味いいスウィングだ。
たいてい上手い監督は自分のリズムを持っているもんだ。
もちろんこれは、監督本人が楽器ができる云々は関係ない話だけれど。
リズムと言えば、今回、ペネロペ・クルスのまくしたてるようなスペイン語の
音感やリズムがとてもよかった。
本作でアカデミー助演女優賞を受賞したペネロペ・クルス。
これまでちゃんと彼女の演技を観たことがなかったのだけれど、
気の狂った女芸術家の役をこんなに見事に演じるなんて!
まさにテリブルな美女である。
相手がホントの彼氏だからやりやすかったりもしたんだろうけど、
それにしてもビビリました。
気迫ありすぎて恐いくらい。
さすがのヨハンセンも、一歩後ろに下がっていた感じ。
その彼氏、「ノーカントリー」のハビエル・バルデムもよかった。
彼にしても難しい役回りだったけれど、
あの強烈だった、おかしな髪型の殺人鬼を微塵も思い出させないほど、
情熱的な色気ムンムンな芸術家になりきっていた。
英語とスペイン語が飛び交う忙しい映画だけど、
ペネロペとのやり取りの妙が見応えがあり、面白かった。
パトリシア・クラークソンのキャラにしてもそう、とてもリアル。
今回も、四人ともキャラが完全に成立してるし、
もちろんそれは演出・脚本にも依ることだが、
それに負けるとも劣らず、演技も絶品でした。
ペネロペの繊細が故の激情も、男の深く根ざした愛も、
ヨハンセンの思慮の足らない部分やコンプレックスも、
ヴィッキーの理知的な人間が知性の壁を崩す瞬間も、
身に覚えがあるかのような、心がじんわり疼くのを感じた。
さすが、あんな辛気くさい顔をしておいて、恋多き男、ウディ・アレン。
人生と風貌が永遠にミスキャスティング。

しかし恋愛映画において彼より「書ける」脚本家を私は知らない。
死ぬまで映画で饒舌に恋愛を語って欲しいものである。
2009年04月24日
天才ダルデンヌ兄弟の「ロルナの祈り」

原題:LE SILENCE DE LORNA(ロルナの沈黙)
脚本・監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
出演:アルタ・ドブロシ/ジェレミー・レニエ ほか
うーん・・・なんで「沈黙」を「祈り」に変えたんだろう。
「この愛だけを、私は信じる。」って、なんだいそりゃ?
ただの恋愛映画じゃないんですけど!
ちなみに本作は2008年カンヌ映画祭で脚本賞受賞。
これでダルデンヌ作品はカンヌ連続4冠目!
もう巨匠なんすね。
ダルデンヌのお二人(中央はたぶん今作主演女優アルタ・ドブロシ)↓

今作は 恋愛を描く・音楽を使用する など
これまでとちょっと趣向を変えたお二人。
これからごちゃごちゃと書きますが
演出も脚本も秀逸、まちがいなく一級品です。
偽りの結婚をした男女に愛が芽生えるって話なのだけれど、
とくに前半の、その過程の描写が細やかで好き。
ヤクを絶とうとする男と、
そんな男に対し嫌悪を露にする女。
男は幾度も女の名を呼び、助けを、そして愛を求める。
いやいや水を差し伸べた女の手首を、
男がぎゅっと、力強く握りしめる。
反射的に女は身を翻し、怒鳴りながらその手を振り払う。
しかし次第に、女の嫌悪の目が同情の目に変わっていく。
入院する男の荷物のなかに、彼の好きなトランプを入れてあげる女。
一緒にトランプをするのさえ拒否した女が、そのトランプを彼に渡す。
男の顔も見ずに病院から去ろうとした女が、
男の安らかな寝息を聞いて、ふいにベットの反対側に回り込んで男の寝顔を眺める。
画面に温かなぬくもりが漂って。
そしてややあって、
やわらかいカーテン越しの光の中でトランプするふたり。
そして、あの美しい自転車のシーン。
ふとした、感情が露呈する一瞬を捉えた脚本。
麗しい前半。
二人の生活をじっと見つめるカメラ。
長回しの心地よい緊張感が、映画を引き締める。
前作の「ある子供」が特にそうだったけど、
つい他人の人生を覗き見したような気になってしまう。
が、しかし。
今回は慣れないドラマティックな展開にしたせいか、
少しリアリティが削げた形になった。
後半、話が展開していくなか、
説明のシーンを省いたために
観客が話を後追いする形になることがある。
「あ、そういうことだったんだ」と気づくと同時に、
これはドラマ(作り話という意味合い)だと気づいてしまう。
そうして脚本的にタイムラグを作ったのに、
映像はドキュメンタリスティックでリアルだから
感覚的に違和感(ズレ)が生じてしまう。
逆に言えば、ドキュメンタリー映画なのに
ドラマティックな展開にしちゃった、みたいな。
また、これは単なる個人的な感想だけれど、
後半、主人公の感情が掴みずらかった。
話をドラマティックにしたのだから、
もう少し演技も抑揚をつけた方がよかったかなという気がする。
それと、男と女の、いわば同情から生まれた愛が、
あそこまで発展する、大きく膨らんでいくのには
もう少し前半で二人の時間を描いてもよかったのかな〜、と。
だから終盤、彼女が少し弱ってずっと独り言を言ってるんだけど、
その変化にはちょっと違和感を感じて。
彼女の恐怖や、孤独や、愛も、後付けで理解したような感じで。
もっと今回はじっくりと描いた方がよかったかな。
でも、後半でもいいシーンはいっぱいあった。
例えば彼女が彼のことを思い出し、刑事を前にして
声を震わすシーンなんかは、正直心震えました。
あんな瞬間を、ああは撮れないよー。
奇跡的な才能だね。
役者もすばらしかった。
ヤク中の夫を演じたジェレミー・レニエは
「ある子供」に続いて二作目の主演。
「ある子供」もすごかったけど、今作もテリブルな演技。
主役を演じたアルタ・ドブロシもビューティフルな演技。
脇役とて誰ひとり、演技と思わせる演技はしてない。
これはやっぱり映画館で観るべきです。
桜坂劇場にて5/1まで公開中。
是非ご覧あれ。
2009年04月19日
ザ・ローリング・ストーンズ「シャイン・ア・ライト」


監督:マーティン・スコセッシ
出演:ザ・ローリング・ストーンズ/バディ・ガイ ほか
撮影:ロバート・リチャードソン
カメラオペレーター:
ジョン・トール/アンドリュー・レスニー/ロバート・エルスウィット/エマニュエル・ルベツキ/エレン・クラス/ミッチェル・アムンドセン/スチュアート・ドライバーグ/デヴィッド・M・ダンラップ/トニー・ジャネリ/ロバート・リーコック/アナスタス・ミコス/クリス・ノアー/デクラン・クイン
ちょいとブランクあってのアップなので、今回は気楽に(?)
ライブ・ドキュメンタリーをピックアップしました。
この映画を映画館で観たくなったのは、
何たってカメラマンのメンツがバリハンパねぇ!こと。
「キル・ビル1・2」のロバート・リチャードソン、
「シン・レッド・ライン」のジョン・トール、
「トゥモローワールド」のエマニュエル・ルベツキ、
「ウォンテッド」のミッチェル・アムンドセン・・・等々
蒼々たるメンバーがこぞって参加しているから。
また音楽がお得意のスコセッシがどうライブを撮るかも楽しみだった。
さて観てみてどうだったかというと、
まずその臨場感にすっかり飲み込まれてしまった。
カメラが動く動く!それはまさにライブ<生>で、
生身の彼らを感じれるような瞬間があり、
そしてゾクッとするような映画的な一瞬があり、
最後にスコセッシらしい最高の遊び心あり。
見どころ満載の、そしてストーンズの魅力満載の、
最高のエンターテイメント・ドキュメンタリーだった。
私はストーンズ世代でもファンでも何でもないけど、
過去のインタビュー集は存分に楽しめるものだったし、
何よりライブをしに楽しんでいる彼らにすっかり魅了されてしまった。
ストーンズ2年目にしてミック・ジャガーが
「とりあえず来年(3年目)はまだやってるかも?」って自信なさげに言ってたり、
またミックとキースが逮捕された時、牢屋の壁越しで励まし合ったエピソードも面白い。
ロニーの年とっても変わらないわけわかんないロジックとか、
そもそもインタビュー映像がないチャーリー・ワッツ(しゃべらない人らしい)とか、
色々はみだしちゃってる彼らのキャラクターや、彼らの関係性が垣間見えて
全く彼らを知らなかった私でも、彼らに愛着がわくような楽しい資料映像だった。
前述の「ゾクッとするような映画的な一瞬」とは、
バディ・ガイという人が出ているシーンだ。
(彼はWiki曰く、‘シカゴ・ブルースの第一人者的存在’の人だそうだ)
彼がまたとっても魅力的で、ストーンズにまさる存在感があって、
彼は1曲しか出てこないのだけれど、なんというか、
彼自身にストーリーを、物語を感じたのだ。
彼が歌と歌のあいだに見せる、えも言われぬ一瞬の表情が、
深い海の、足下に広がる群青のような、
とてつもない奥行きを含んでいた。
この1カットだけでも、この映画は映画として成立している、と断言出来るくらい、
すばらしい一瞬だった。
ここのカメラマンは誰だったんだろう?
そして、ラストのワンカット。
序盤、スコセッシがストーンズの破天荒さに振り回されているような場面があるけれど、
このラストシーンでスコセッシが勝ったね。
最後に大ホームラン打って、荒くれ者どもを月まで吹っ飛ばしちゃった。
スコーンと突き抜けた心地よい爽快感に包まれて、
ライブ後のような火照ったテンションで、しかし疲労感はない身体で、
映画館を後にしたのでした。
2009年02月05日
黒沢清の新境地「トウキョウソナタ」
監督:黒沢清
脚本:マックス・マニックス/黒沢清/田中幸子
出演:香川照之/小泉今日子/小柳友/井之脇海/井川遥/津田寛治/児嶋一哉/役所広司
(※役者が全員よかった。拍手!)
ネタバレあり。
以前「おくりびと」でクソ邦画界などと申しましたがこの人を忘れてました!
黒沢清。
彼のような良質の映画監督が、いまの日本でコンスタントに作品が撮れてるのは
邦画界の唯一の良心といっていいでしょう。
(ただし。製作に他国が参加しているのが若干気になりますが。)
前作「叫」も傑作!だったけど、今作のようなホラー以外も
これからたくさん撮ってくれると個人的には嬉しいなと。
ガイドブックによると
今回はマックス・マニックスさんの脚本を元にして共同脚本したそう。
監督が妻と息子の話をふくらませたらしい。
なるほど、アメリカ軍に入隊したり、強盗と逃避行したりと
なんか嘘っぽいというか(笑)、演劇的な展開はらしい気がしました。
というのも彼の作品を観ていると、
単なるリアリティだけを求めてないとわかるからです。
例えば「叫」でいう葉月里緒菜が飛んじゃうシーンとか、
あれなんかもう現実をスッとんじゃって、
超現実的な世界にいっちゃう。
人を殺すシーンなんかはあんなリアルに撮るのに、(←今作の話じゃないです)
そういう非現実的というか、超現実的というような場面を
当たり前のように挿入してくる。
でもそれが黒沢清の魅力の一つであり、作家的な部分に思います。
個人的にはそういうとこが一番好きです。
ハッとさせられた瞬間に、もっとも黒沢清を感じます。
今回はそういうスッとんだ場面は(ホラーじゃないんで)おとなしかったですが
役所広司が出てくる場面はおかしかったですね。
どうもあそこだけやたらウソ臭い!
役所広司がバタ臭い演技をしているのが、また妙なコメディになっていて。
暗い話だから、こんな部分は特に必要だったのかもしれませんね。
あの配給がある公園や暗い色彩の住宅街から、
夜空に星が光る海(湖?)に逃れたかったのはキョンキョンだけじゃない。
わたしたち観客も(監督も)、でしょう。
景色で思い出した、印象に残るシーンがあります。
津田寛治が死んだと知った後、街の景色が映し出される場面。
暗い空に高層ビルが立ち並び、人工的な、生きてるのに死んだような街。
現実を象徴するショットが、じんわり絶望的でよかった。
他には、テーマが家族なので、やはり食卓のシーンが印象的でした。
オヤジがビール飲むまで待たされるシーンとか、
あの荒れた部屋の中で黙々と食事するシーン。
観ていて痛々しかったのは、自身にも覚えがあるからですが、
こういうリアルな演出は卓越してると思います。
さて、今回は珍しく、話の内容について触れようと思います。
みなさん、あのラストはどう感じたでしょうか。
いつもなら、崩壊しきった家族を描く黒沢が撮った、壊れかけの家族。
あんなことがそれぞれに起こって、ボロボロになってるのに、
ただ黙々と、暗い顔を突き合わせて食事する家族。
家族が共に暮らすことに、社会的な意味はあっても、絶対的な理由はない。
でもそばに自分以外の人間がいることで“干渉”が起こる。
当然いいことも、悪いことも起こる。
しかし、それが自分の可能性をもまた変えるのだ。
みたいなね。
人の可能性を信じた、いいラストだと思いました。
この人が暗い時代に、いい示唆を与えてくれました。
さて(またさて、からですが)
今回の役者はよかったですね〜。
アンジャッシュの児嶋までよかったのは、やはり監督の力量でしょう。
が、それを本作で超えた役者がいました。
香川照之。
もう誰の作品に出ても安心して観れるな、という気がします。
ちなみに、キョンキョンの評価も高いようですが
どうもあのぶりっ子な声の出し方は私はダメです。
(だって、いっつもあんな語尾がハねてる主婦いないでしょ?)
似た役を「空中庭園」(監督:豊田利晃、2005年)でもやってますね。
こっちの方がブリっ気なしでハマってた気がします。
といったわけで、
次回作もやっぱり期待せずにはいられません。
黒沢清監督、いま日本で一番信頼できる監督であります。
2009年01月11日
想い出の宝もの箱。「アメリ」
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
製作:クローディー・オサール
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ/ギョーム・ローラン
出演:オドレイ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ 他
2001年公開の本作を
年明け一発目にもってくるのもどうか?
しかし書きたくなったので仕方なし!
懐かしくなった方は、旧作レンタルでどうぞ。
以前観た時にはあまり好きになれなかった。
映画なのにあまりにマンガすぎる、と思った。
私がいかに不自由な世界の住人だったか___
今回は存分に楽しめた!
カメラワークも常に動いているような感覚だったが
決してせわしないわけではなく、キチンと計算され整理されている。
ローアングルや長回しや遠景なども効果的。
照明もいい。
引きこもりのアメリが主人公なため室内のシーンが多いが、
そのぶん屋外のシーン、特にモンマントルの丘のシーンなどは
のびのびとクレーンで見せてくれるから気持ちいい。
駅の周辺で謎の男を追いかけるシーンも好きだし(あのワンカットはGreat!)
実家の庭先のシーンで流れる、あの枝葉を揺らす風・・・
あぁ初夏のパリスの風はたおやかで温もりを帯びている。
(行ったことないけど。)
映画に出てくる小さなエピソードやアイデアのまぁ豊富なこと!
勝ち取ったビー玉を落としちゃう少年のエピソードや、
矢印で宝物探しをしたりする子供の事の遊びやいたずら、
スピード写真の男の謎、ルノワールの水を飲む女、などなど・・・
こうしたややノスタルジックなエピソードや現代的な映像処理が
この映画をマンガっぽくさせていると思うが、
しかしこれこそがこの映画を豊かにしている。
猫や写真やビデオの映像(ストック)などの使い方も好きだ。
スピード写真が喋るとこなんか、会話も面白かった。
音の使い方もセンスいい。
老いた父に旅を想起させる小鳥の鳴き声や、
盲人が駅のホームで古いレコードを聴いているシーンもリリカルでいい。
美術についてはお見知りの通りだが、
アメリの部屋に飾られたミヒャエル・ゾーヴァの絵や豚のランプの
絵本的な雰囲気が、アメリのそれとすごく合ってる。
もし彼の絵本を未見であれば、ぜひチェックしてみてほしい。
「キリンと暮らす、クジラと眠る」がグー。
さて話を戻して
あのカフェの住人もそれぞれがキャラが立っていて面白かった。
ストーカー男を回す設定は?だけど
ストーカーと売れない作家がケンカするシーンなんかはあってうれしいシーンだ。
地味だがカフェのママと恋愛を語る初老のじいさんもいい。
ちなみにそのカフェのママさん(クレール・モーリエという女優)は
トリュフォーの「大人は判ってくれない」のお母さん役だった人だそうだ。
「突然炎のごとく」のシーン(未見なのでたぶん、だけど)がテレビに映ったり、
ルノワールの絵が出てきたりするあたり、そのスジの映画が好きなんだろう。
そこでハタと、キャラ立てがうまくいってる理由がわかった気がした。
これが今回の発見だった。
とくに画家がいい例で、
青年に絵を教えたり、主人の悪口を隠れて言わせてあげる一方で、
やりすぎたり空気を読めないと容赦なく怒鳴りつける。
こういう人のいい面と悪い面を同時に描くと、すごく人間が人間臭くなる。
いいシナリオだなと思った。
こういうシーンがもっとあったら、深みのある映画になっていただろうな。
でもでも、かくも楽しい120分。
笑顔が笑顔を呼ぶ、いい映画でしたね。
殺人が殺人を呼ぶ、かのイーストウッドの映画とは大違い!
(↑ウソ、本当は大好きです。)
ラスト、画家が自分の絵を描きだしたのは嬉しかったな。
たまには救いのある映画もみにゃいかん、と自戒。
製作:クローディー・オサール
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ/ギョーム・ローラン
出演:オドレイ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ 他
2001年公開の本作を
年明け一発目にもってくるのもどうか?
しかし書きたくなったので仕方なし!
懐かしくなった方は、旧作レンタルでどうぞ。
以前観た時にはあまり好きになれなかった。
映画なのにあまりにマンガすぎる、と思った。
私がいかに不自由な世界の住人だったか___
今回は存分に楽しめた!
カメラワークも常に動いているような感覚だったが
決してせわしないわけではなく、キチンと計算され整理されている。
ローアングルや長回しや遠景なども効果的。
照明もいい。
引きこもりのアメリが主人公なため室内のシーンが多いが、
そのぶん屋外のシーン、特にモンマントルの丘のシーンなどは
のびのびとクレーンで見せてくれるから気持ちいい。
駅の周辺で謎の男を追いかけるシーンも好きだし(あのワンカットはGreat!)
実家の庭先のシーンで流れる、あの枝葉を揺らす風・・・
あぁ初夏のパリスの風はたおやかで温もりを帯びている。
(行ったことないけど。)
映画に出てくる小さなエピソードやアイデアのまぁ豊富なこと!
勝ち取ったビー玉を落としちゃう少年のエピソードや、
矢印で宝物探しをしたりする子供の事の遊びやいたずら、
スピード写真の男の謎、ルノワールの水を飲む女、などなど・・・
こうしたややノスタルジックなエピソードや現代的な映像処理が
この映画をマンガっぽくさせていると思うが、
しかしこれこそがこの映画を豊かにしている。
猫や写真やビデオの映像(ストック)などの使い方も好きだ。
スピード写真が喋るとこなんか、会話も面白かった。
音の使い方もセンスいい。
老いた父に旅を想起させる小鳥の鳴き声や、
盲人が駅のホームで古いレコードを聴いているシーンもリリカルでいい。
美術についてはお見知りの通りだが、
アメリの部屋に飾られたミヒャエル・ゾーヴァの絵や豚のランプの
絵本的な雰囲気が、アメリのそれとすごく合ってる。
もし彼の絵本を未見であれば、ぜひチェックしてみてほしい。
「キリンと暮らす、クジラと眠る」がグー。
さて話を戻して
あのカフェの住人もそれぞれがキャラが立っていて面白かった。
ストーカー男を回す設定は?だけど
ストーカーと売れない作家がケンカするシーンなんかはあってうれしいシーンだ。
地味だがカフェのママと恋愛を語る初老のじいさんもいい。
ちなみにそのカフェのママさん(クレール・モーリエという女優)は
トリュフォーの「大人は判ってくれない」のお母さん役だった人だそうだ。
「突然炎のごとく」のシーン(未見なのでたぶん、だけど)がテレビに映ったり、
ルノワールの絵が出てきたりするあたり、そのスジの映画が好きなんだろう。
そこでハタと、キャラ立てがうまくいってる理由がわかった気がした。
これが今回の発見だった。
とくに画家がいい例で、
青年に絵を教えたり、主人の悪口を隠れて言わせてあげる一方で、
やりすぎたり空気を読めないと容赦なく怒鳴りつける。
こういう人のいい面と悪い面を同時に描くと、すごく人間が人間臭くなる。
いいシナリオだなと思った。
こういうシーンがもっとあったら、深みのある映画になっていただろうな。
でもでも、かくも楽しい120分。
笑顔が笑顔を呼ぶ、いい映画でしたね。
殺人が殺人を呼ぶ、かのイーストウッドの映画とは大違い!
(↑ウソ、本当は大好きです。)
ラスト、画家が自分の絵を描きだしたのは嬉しかったな。
たまには救いのある映画もみにゃいかん、と自戒。
2008年12月15日
2008年映画総括評
今年も終わりに近づいて参りました
少し早いけれど総括してみます。
今年は振り返ってみると
レトロな映画ばかりが印象に残っている。
だって最近の映画って、情緒がないんだもん。
この分だと、
来年もまたレトロ回帰な日々となるやもしらん。
というわけで
上半期ベスト3
1「夜顔」(マノエル・デ・オリヴェイラ)
2「4ヶ月、3週と2日」(クリスティアン・ムンジウ)
3「ノーカントリー」(コーエン兄弟)
下半期ベスト3(全て新作ではないが、初めてフィルムで観れたのでランクイン)
1「81/2」(フェデリコ・フェリーニ)
2「東京物語」(小津安二郎)
3「白い馬」(アルベール・ラモリス)
問題作ベスト3
1「ダークナイト」(クリストファー・ノーラン)
2「ミスト」(フランク・ダラボン)
3「イントゥ・ザ・ワイルド」(ショーン・ペン)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<総括>
今年はしょっぱなから90代監督オリヴェイラの映画観にノックアウトされ、
ロベルト・アルトマンの遺作「フィッツジェラルド劇場で」で
自分の死に様に想いを巡らせ始まった。
ノア・バームバックやクリスティアン・ムンジウの才能に期待しつつも
「ブリキの太鼓」や「サンセット大通り」などの名作にやはり惹かれる。
邦画に至っては「人セク」「アヒルと鴨〜」にもはや絶望感すら漂い始め・・・
下半期
「おくりびと」で邦画に一筋の希望を見いだし
昨今のデジタルリマスター版ラッシュに乗じて
映画館で不朽の名作たちを観る幸運にコーフンで我を忘れ映画評も忘れ
一方では期待はずれのハリウッド娯楽映画たちに落胆。
問題作3作は
1位、2位は映画評をご覧頂きたい
3位はあのハリウッド異端児までがクソ編集術の毒牙に侵され
「ショーン・ペンよお前もか!」とひどく落胆。
同タイトルで映画評を書くも、憤りで醜い文章になったためアップせず
今後のハリウッド映画の動向を冷たく見守ることにする。
さてさて来年はどんな映画年になるでしょうか
期待と不安に揺れる今日この頃。
少し早いけれど総括してみます。
今年は振り返ってみると
レトロな映画ばかりが印象に残っている。
だって最近の映画って、情緒がないんだもん。
この分だと、
来年もまたレトロ回帰な日々となるやもしらん。
というわけで
上半期ベスト3
1「夜顔」(マノエル・デ・オリヴェイラ)
2「4ヶ月、3週と2日」(クリスティアン・ムンジウ)
3「ノーカントリー」(コーエン兄弟)
下半期ベスト3(全て新作ではないが、初めてフィルムで観れたのでランクイン)
1「81/2」(フェデリコ・フェリーニ)
2「東京物語」(小津安二郎)
3「白い馬」(アルベール・ラモリス)
問題作ベスト3
1「ダークナイト」(クリストファー・ノーラン)
2「ミスト」(フランク・ダラボン)
3「イントゥ・ザ・ワイルド」(ショーン・ペン)
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<総括>
今年はしょっぱなから90代監督オリヴェイラの映画観にノックアウトされ、
ロベルト・アルトマンの遺作「フィッツジェラルド劇場で」で
自分の死に様に想いを巡らせ始まった。
ノア・バームバックやクリスティアン・ムンジウの才能に期待しつつも
「ブリキの太鼓」や「サンセット大通り」などの名作にやはり惹かれる。
邦画に至っては「人セク」「アヒルと鴨〜」にもはや絶望感すら漂い始め・・・
下半期
「おくりびと」で邦画に一筋の希望を見いだし
昨今のデジタルリマスター版ラッシュに乗じて
映画館で不朽の名作たちを観る幸運にコーフンで我を忘れ映画評も忘れ
一方では期待はずれのハリウッド娯楽映画たちに落胆。
問題作3作は
1位、2位は映画評をご覧頂きたい
3位はあのハリウッド異端児までがクソ編集術の毒牙に侵され
「ショーン・ペンよお前もか!」とひどく落胆。
同タイトルで映画評を書くも、憤りで醜い文章になったためアップせず
今後のハリウッド映画の動向を冷たく見守ることにする。
さてさて来年はどんな映画年になるでしょうか
期待と不安に揺れる今日この頃。
2008年11月06日
これが本物の感動だ!映画だ!「81/2」

今回は、今日こそは大いにこの言葉を使いたい。
感動しました。
真に感動しました。
これこそが本当の映画で、
これなくして映画は語れない。
めくるめく映画的体験。
モノクロの計算し尽くされた映像美。
あらゆる映像的おもしろさの探求。
マストロヤンニの横顔の輪郭のように
克明に描き出される人間の欲望や苦悩。
本当にあっという間の珠玉の138分。
どんな場面もすばらしく、
鑑賞後、脳がじんわりと痺れているのを感じた。
そして席を立ち、再び日常の光の世界に戻ったら、
目が、脳が、それらを拒絶しようとした。
脳が、脳を殴っていた。
そう、映画が、私を映画の世界に引きずりこもうとしていた。
できることなら、そのまま引き込まれたかったンだけど。
どんなすばらしい音楽も、どんな藝術も、これほどの感動は覚えなかった。
やはり私は、映画が一番好きなのだ。
そう気づかされた。
みなさんこれこそ、映画です。
映像でのみ語る、映画なのです。
印象に残っているシーンをメモ書き。
・ファーストシーンの渋滞した車の奇妙なシーン。手だけ出てるバス。海へ墜落するシーン。
・サナトリウムの柩機卿のサウナ入浴シーン。シーツや湯気の演出。
(これはホントにすばらしいシーンでした)
・ホテルのロビーでの矢継早に質問されるシーン
・ハーレムでの入浴シーン、おばさんのダンス
・夫人とのシーン(いちいちセリフが生々しい)
・「幸せとは、真実を正直に語れることだ」のシーン
・ラストシーン(映画監督として息を吹き返したシーンに思わず涙。)
ああ、今度はもっともっと大きなスクリーンで観たい!
そしたら本当に映画の世界から帰ってこられなくなったりして。


